ニタリザメとは?特徴とオナガザメ科の魅力
青く広大な外洋を優雅に泳ぐ「ニタリザメ」。その名前を聞いたことがある方も多いかもしれませんが、どんなサメなのか、意外と詳しく知られていません。オナガザメ科というグループに属し、尾の長いシルエットと美しい色合い、そして“ダイバー憧れの幻のサメ”ともいわれる理由に迫っていきます。
圧巻の尾鰭と独特な姿の理由
ニタリザメの最大の特徴は、なんといってもその長大な尾鰭です。全長4メートルを超える個体もいて、尾鰭は体の半分もの長さに達します。背中側は濃い青や灰色、体の側面にはメタリックなシルバーの輝き、そして腹側は純白と鮮やかなコントラストを描きます。特にオナガザメ科特有の大きな胸鰭、丸みのある鰭の先端、大きな目と小さな口も見分けポイントです。
マオナガやハチワレといった近縁種もいますが、腹の白色帯が胸鰭基部上まで伸びないのがニタリザメの識別ポイントになります。出産直後の子でも150cm以上もあり、オナガザメ科の中で最も小柄ながら、その存在感は抜群です。「似たり」からその名がついたことも、体型の微妙な違いにこだわる日本人らしいエピソードといえるでしょう。
ニタリザメとオナガザメ科の違い
オナガザメ科はニタリザメの他に、マオナガザメやハチワレザメの計3種が知られています。同じく長い尾鰭を持つものの、マオナガは体格がひとまわり大きく、白色帯や胸鰭の形、目と口の大きさで判別できます。ハチワレは頭部に溝があり、縦長で非常に大きな目が特徴です。
地域によっては区別が難しいこともあり、「オナガザメ」とまとめて呼ばれることも多々あります。世界中で20種以上の別名を持つほど、その人気と認知度にギャップがあるのも面白いポイントです。英語名の「Pelagic thresher(遠洋性オナガザメ)」からもわかるように、ニタリザメは外洋で目撃されることが多いサメです。
私が感じたニタリザメの生態と捕食行動
実際にニタリザメの生態について調べていくと、その生き方や行動パターンもとてもユニークで興味深いものばかりです。尾鰭は単なる飾りでなく、驚きの“武器”として使われるのです。
実際に観察した捕食シーン
ニタリザメはイワシやサバのような浮魚類、イカなどを主なエサとしています。捕食方法が圧巻で、一気に獲物へ高速で近づき、体を急反転させて“鞭”のごとく尾鰭を振り下ろします。この攻撃で小魚の群れを一撃失神させることもあり、一度で3匹以上を仕留めてしまうことも珍しくありません。尾鰭で水を切る瞬間、水中に気泡が生じるほどの威力で、ダイバーの間でも伝説的なシーンとして語られます。
捕食行動は「準備→攻撃→回復→獲物の回収」と段階的に行われ、胸鰭を内側にたたんで体を持ち上げながら尾鰭を頭上まで運ぶという複雑な動きを見せます。オーバーヘッド型・サイドウェイ型と呼ばれる異なる攻撃パターンも観察されています。繁殖や生息域による違いが研究されており、尾鰭で狩りをするサメはニタリザメだけという特異性が際立ちます。
マラパスクア島でのニタリザメ観察体験
世界で最もニタリザメ遭遇率が高いスポットのひとつが、フィリピンのマラパスクア島です。魅力的なダイビングエリアとして、多くの水中写真家や生物ファンがこの島を目指します。
絶滅危惧種の現状とワシントン条約
ニタリザメは現在、IUCNレッドリストで絶滅危惧種(Endangered, EN)に指定されています。数は減少傾向で、その背景にはマグロ漁などでの混獲、スポーツフィッシング、ヒレや肉の利用といった人間活動が大きく影響しています。2017年にはオナガザメ科全体がワシントン条約附属書IIに掲載され、同年10月から国際取引が規制されるようになりました。
放流した後も死んでしまうなど、リリース対策も課題になっています。マラパスクア島では観察ルールが徹底され、ライトやフラッシュを控えたり、進入禁止ロープの設定も徹底されています。現地ガイドの説明にも真剣さが感じられ、サステナビリティの意義とともに現状を肌で感じる貴重な体験となりました。
サステナビリティと繁殖の取り組み
ニタリザメの繁殖特性も非常に興味深いです。胎生(正確には卵食型胎生)で、胎児は最初に卵黄を吸収し、その後は母体が供給する未受精卵を食べることで成長します。1回の出産で2尾の子ザメが生まれますが、その生存率は非常に低く、出産間隔や妊娠期間もまだ詳しく解明されていません。
マラパスクア島の地元コミュニティでは、ニタリザメの生態や保護につながる教育活動も進んでいます。ダイビング観察ルールの徹底や、クリーニングステーションの情報共有はダイバー、地域双方の意識向上につながっています。希少な繁殖シーンに出会えたときの感動は、環境保護への想いも強めてくれました。
水族館でのニタリザメ展示と教育効果
日本国内では、ニタリザメが水族館で展示される機会はきわめて稀です。その理由は、飼育が非常に難しく、長期飼育の成功例がほとんどないためです。それでも過去には沖縄美ら海水族館や大阪の海遊館、葛西臨海水族園で短期間の展示例があります。
ニタリザメを身近に観察する意義
水族館でニタリザメに出会える瞬間は、本当に特別です。来館者がその美しい尾鰭やシャープな体型に目を見張るのはもちろんですが、実物を間近に観察できることで、絶滅危惧種の現状や生態への理解が格段に深まります。NHKワイルドライフなどでも特集され、子どもから大人まで幅広い世代がその魅力を受け取っています。
研究面でも注目度は高く、フィリピンでの狩猟行動の撮影や科学誌での分析発表、国際的な保全活動も活発です。水槽展示をきっかけに、サメや海の生き物への正しい知識、保全意識が広がることを強く実感しています。
まとめ
ニタリザメは幻想的な姿、圧倒的な尾鰭のアクション、そして絶滅危惧種としての厳しい現実を併せ持つ存在です。オナガザメ科の魅力を知ることで、ダイバーや海が好きな人たちだけでなく、幅広い世代に“海の生態系を守る意義”が伝わってほしいと切に願います。美しい水中の出会い、そして人とサメとの距離が少しでも縮まり、多くの人がファンになってくれるきっかけになれば嬉しいです。
新卒採用は10月から開始!
登録はこちら⇒MMM
今すぐクリック!一緒に未来を創ろう!!

書籍販売中!
購入はこちら⇒AAA

コメントを残す