ニタリザメとは?尾びれと特徴の基礎知識
ダイバーやサメ好きの間で根強い人気を誇る「ニタリザメ」。その最大の魅力は、遠くからでも目を引く長大な尾びれと優雅な遊泳スタイルにあります。ニタリザメは外洋での神秘的な生態や独自の捕食行動のおかげで“幻のサメ”“最後の大物”とも称され、多くのファンを魅了し続けています。
このサメは他の大型サメとは一線を画した特徴を持ち、実際に観察することで迫力と繊細さを同時に感じることができます。本記事では、ニタリザメの基本情報から観察体験談、絶滅危惧種としての現状や水族館飼育の課題まで、ダイバー目線を交えて詳しく解説します。

オナガザメ科ニタリの分類と呼び名
ニタリザメは学名「Alopias pelagicus」といい、英名ではPelagic thresher sharkと呼ばれています。分類としてはネズミザメ目オナガザメ科に属し、オナガザメ属の1種です。同じオナガザメ科には他にも「マオナガ」や「ハチワレ」といったよく似たサメが含まれており、これらの違いも注目されています。
興味深いのは、ニタリザメには「ニタリ」や「似たり魚鮫」をはじめ、20種類以上もの呼び名が存在する点です。名前の由来は「マオナガと似ているが少し違う」特徴から付けられたと言われています。英名の“Pelagic”は遠洋性の生態を表す言葉であり、このことで彼らが外洋を広く回遊するサメであることがうかがえます。
この分類や呼称の多様さは、地域や研究の進展によるものです。近年は、ニタリザメの異なる呼び方や見分け方がSNSやダイビングガイドでも話題になっています。分類に関心のある方は、ニタリ Wikiもぜひ参照してみてください。
マオナガ・ハチワレなど類似種との違い
サメ好きのダイバーでも混同しがちな「マオナガ」や「ハチワレ」との見分け方はとても重要です。ニタリザメはオナガザメ科で最も小型の種で、体長は最大で約4.3mほど。特徴としては、体長のほぼ半分に及ぶ長い尾びれ、大きな目、小さめの口。そして背側が青みがかったグレー、体側がメタリックシルバー、腹側が白色で、白帯は胸びれの根元までは達しません。
似た種であるマオナガと比べると、胸びれの大きさや白帯の長さが異なる他、マオナガは体自体がより頑健です。ハチワレは頭部の後方に溝があり、縦長で非常に大きな目が特徴的。これらの点に注意を向けることで、現地での「ニタリ」かどうかの判断がしやすくなります。
実際の観察例では、ダイバーが体形や尾びれの比率、目の大きさといったポイントをもとに判別しています。そのため、ニタリザメに関心を持ったなら、識別ポイントをネットや書籍で一度チェックしておくと体験もぐっと深まります。
驚きの尾びれ!ニタリザメの捕食行動体験談
ニタリザメはその特異な尾びれアクションで世界中のダイバーを驚かせます。まるで命綱のように長い尾びれは、見た目のインパクト以上に鮮烈な捕食行動に使われているのです。実際、私が初めてその現場に立ち会ったとき、緊張と感動が一気に押し寄せてきました。
ダイビング中、ニタリザメが群れ泳ぐ小魚たちの間に静かに忍び寄り、素早く体をひねって尾びれを空中に振り上げる瞬間――まさに自然界のスペクタクルです。一撃で小魚を何匹も気絶させ、一瞬のうちに獲物をパクッと飲み込むこの姿は圧巻でした。尾びれで水中を強烈に叩くと、水泡が弾ける様子も見てとれます。
この行動は「準備→攻撃→回復→獲物回収」の4つの段階で行われることが研究からもわかっています。ダイビング後には、その精緻な体の動きと捕食効率にすっかり魅了され、思わず仲間内で”サメ談義”が止まらなくなったのを思い出します。

フィリピン・マラパスクア島での観察日記
世界で最も有名な「ニタリザメ観察地」は、フィリピンのマラパスクア島周辺です。ここでは早朝のダイビングを中心に、高確率でニタリザメの姿を目にすることができます。私が参加した際も、ダイビングショップから船でポイントまで移動、まだ薄暗い水中で長い尾びれが静かに現れる様子に言葉を失いました。
そのときの1ダイブで3〜4個体、多い時期には10個体以上と遭遇できることも。水深22〜25mに広がる「クリーニングステーション」では、サメたちが身体を掃除してもらいながら優雅に泳ぐ姿をじっくり観察できます。水中はルールが細かく決まっていて、ライト利用や接近距離に十分な配慮が求められる環境です。
現地ではダイバーたちが口々に「伝説のサメ体験だった」と語り、お互い写真や動画を見せ合って盛り上がりました。生息地としてのマラパスクアの価値は、世界の海好きにとって特別な意味を持つ場所です。
クリーニングステーションで見た生態
マラパスクア島のクリーニングステーションでは、サメが自ら小魚に体表を掃除してもらう独特の生態が観察できます。この時のニタリザメは普段の捕食時とは異なり、非常に優雅に、あたかも踊るようにゆっくりと泳いでいるのが特徴です。クリーナー魚たちが体やエラ周りに集まり、不要な寄生虫や汚れを取り除いてあげます。
驚くべきことに、ニタリザメはこの「掃除ルーティン」を定期的に利用し、ダイバーにとっては彼らのリラックスした表情や動作を間近で観察できる貴重な機会となります。体験者の多くが「神秘的」「思わず息を呑む美しさ」と感嘆する理由はここにあるでしょう。
観察ルールには注意が必要で、ライト照射や不用意な接近は禁止されています。こうした決まりを守りつつ、サメたちと同じ海の一員として向き合うことが大切です。
尾びれの役割と捕食方法の解説
ニタリザメの尾びれが世界の研究者を惹きつける理由は、その攻撃的かつ合理的な捕食行動にあります。群れを成す小魚を捕まえるとき、サメは急激に体を反転させ、巨大な尾びれをまるで鞭のように振るいます。攻撃は「オーバーヘッド型(上から)」と「サイドウェイ型(横から)」の2パターンが存在し、どちらも一撃で複数の魚をしばしば気絶させます。
そのメカニズムを支えるのは、
- 尾びれ基部にある独特の溝
- 極端な屈曲に耐えるための特殊な脊椎構造
- 胸びれや体の筋肉を利用したバネのような動き
といった身体の適応です。平均的には一撃で3〜4匹、多いときは7匹もの小魚を失神させると計測されています。この巧妙な捕食法は、オナガザメ科の中でもニタリザメならではのものです。
ニタリザメと絶滅危惧種・保護の現状
ニタリザメはダイバーの間で人気がある一方、絶滅の危機にも直面しています。IUCNレッドリストでは絶滅危惧種(EN)に指定されており、国際的にもその保護が叫ばれるようになりました。世界的な生息数の減少は、主に漁業による混獲や乱獲が原因と考えられています。
生息地の一部ではニタリザメの肉やヒレ、肝油が利用されたり、スポーツフィッシング中のリリース後死亡例も報告されています。こうした背景から「幻のサメ」「神の使者」と呼ばれながらも、人間活動による影響が無視できない存在となっています。観察地ではサメ保全や観察ルールの徹底が徐々に広まりつつありますが、依然として効果的な保護策は課題です。
ニタリザメの保全を考える際、ダイバーや海好きの私たち一人ひとりが持続可能な海との関わりを考え直す機会となるでしょう。
IUCNレッドリストとワシントン条約の状況
ニタリザメは2017年、ワシントン条約(CITES)の附属書IIにオナガザメ属として掲載され、国際取引が厳しく制限されるようになりました。これにより、ニタリザメを含む同属の国際的な流通・輸出入には特別な規制が課されるようになっています。IUCNレッドリストにおいても「絶滅危惧種(EN)」と分類されており、その状況は依然として危惧されています。
このような国際的な枠組みが敷かれているものの、現実には延縄や刺し網などでの混獲が後を絶たず、生息数の急減を食い止めるのは困難とされています。世界中の専門家が「保全対策の抜本的強化が必要」と警鐘を鳴らしています。
個人としてできることはまず知識を身につけること。そして、ダイビングルールや消費選択を通じて、ニタリザメと海の未来に貢献することが大切です。

水族館飼育の現実と課題
ニタリザメの水族館展示はきわめて稀です。沖縄美ら海水族館旧館や大阪海遊館、葛西臨海水族園で短期間だけ展示されたことがありますが、最長でも26日間しか飼育できませんでした。これは、ニタリザメが外洋で広い範囲を泳ぐ性質や、特殊な体構造をもつために水槽環境に適さないことが大きな要因です。
また、目に瞬膜がなく、日中の明るい水槽に弱いこと、尾びれを大きく動かすため広大なスペースが必要になることなど、長期飼育には多くの難題が伴っています。研究観察でも、野生下での行動や生態に比べて、水槽内では自然な姿がほとんど見られません。今後、持続可能な形での飼育や教育普及が実現するには、まだ長い課題が残っていると言えるでしょう。
ニタリザメとの出会いが教えてくれたこと
自然の中で本物のニタリザメと出会うことは、海や生態系のつながり、自分自身の価値観を改めて考えさせてくれる体験です。その神秘的な泳ぎや尾びれの一挙手一投足、自分を警戒しつつも無関心に近いおおらかさには、畏敬の念さえ覚えます。
私が現地で感じたのは、ニタリザメがただの「珍しいサメ」「ダイビングの的」なのではなく、海洋生態系を支える大切なプレイヤーだということです。彼らの減少は、私たちの楽しみや未来の選択肢も奪いかねません。だからこそ、一度でも彼らと同じ水で呼吸したダイバーには「守りたい」「伝えたい」「学び続けたい」という思いが強く残ります。
尾びれを間近で見た感動のエピソード
初めてニタリザメの尾びれを間近に見た光景は、今も頭の中に鮮明に焼き付いています。水深20m超の淡い青に浮かぶ、悠然とした巨大な影。その影がゆっくりと旋回し、「そっと手を伸ばせば届きそう」と思わせる距離まで接近したとき、心臓が跳ねるほど興奮しました。
尾びれを振り上げて群れを驚かせるだけでなく、クリーニングステーションで小魚と共生する姿は生命の神秘そのものでした。観察中は無言ながらも、他のダイバーとアイコンタクトして感動を分かち合ったことを覚えています。写真や動画では伝わらない、”リアル”な出会いの感動―これは現地に足を運んだ者だけが味わえる宝物です。

まとめ
ニタリザメはその見事な尾びれと独特な生態で、海と人の心をつなぐスペシャルな存在です。観察やダイビング体験を通して、単なる珍魚ではなく、絶滅の危機にある海洋生物だという現実にも目を向けたいものです。知識を深め、出会いを大切にすることが、サメと海の未来を守る第一歩となります。
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